ゼロショット学習とは?基本原理から応用分野、ファインチューニングとの違いまで徹底解説!
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皆さんはゼロショット学習をご存じですか?ゼロショット学習はAIや機械学習の分野で用いられる学習手法の1つです。いったいどのような学習手法なのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事ではゼロショット学習を中心に基本原理や応用分野、ファインチューニングとの違いなどをご紹介していきます。
ゼロショット学習とは?
ゼロショット学習とはどういうものなのか、基本的な情報を最初にご紹介します。
ゼロショット学習の概要
ゼロショット学習は、学習データが全く存在しないものに対して事前に特徴を学習する形で識別を目指していく学習方法です。人間にも言えますが、全く見たことも聞いたこともないものを識別していくのは至難の業であるように、AIにとっても未知のものに対する知識はないので判別のしようがありません。
一方で人間はある程度の知識を持っていれば、その知識から推察していくことが可能です。この推察を行うのがゼロショット学習と言えます。
ゼロショット学習の基本原理
ゼロショット学習はこれまで学んできた学習モデルの中から特徴や傾向を取り出して、未知の内容にぶつけていくというのが基本的な原理となります。これを行うことで、学習データが乏しい場合でも、推察によって学習を行っていくことが可能です。
これに加えて他の手法を組み合わせていくことで、より難しい内容にも対応できます。その点では汎用性もそれなりに期待できるため、様々なジャンルに対応できるのもゼロショット学習のポイントと言えるでしょう。
ゼロショット学習の特徴
ゼロショット学習にはどのような特徴があるのか、解説していきます。
見知らぬカテゴリーでも予測ができる
ゼロショット学習ではこれまでに利用したモデルを活用する形で推察を行うため、未知の状況や課題に対して対応していく力が存在します。人類がこれまでに体験したことがないようなことを予測していくのにゼロショット学習は効果を発揮するのです。
学習データがないからやりようがないと諦める必要は一切なく、これまでに利用した学習モデルを有効活用し、推察を行っていけるのがゼロショット学習の特徴です。
学習データがわずかでも問題なし
一般的な機械学習の場合、学習データがたっぷりあることでおおよその傾向をつかんでいくことができます。そのため、学習データが一定数存在しないと納得のいく結果につながらないなどの悪影響につながりやすく、その点がネックとされてきました。
その点、ゼロショット学習は学習データがなくても特に問題はなく、推察につながる材料さえ事前に用意されていれば学習データが乏しくても推察によって学習を行っていくことができます。学習データが存在しないようなことにも対応できるのがゼロショット学習の特徴です。
ゼロショット学習のメリット
ここからはゼロショット学習に関するメリットについてご紹介します。
学習データにかけるコストを削れる
ゼロショット学習のいいところは学習データが少なくても推察などで学習を行える点にあります。裏を返せば、学習データにコストをかけなくても済んでしまうのが特徴的であり、メリットの1つです。
学習データの確保にも一定のコストがかかり、質にも影響を与える部分だからこそ妥協できない分野と言えます。ゼロショット学習では学習データが乏しくても問題は小さいので、コストを削れるのは大きいでしょう。
これまでの学習モデルを応用できる
ゼロショット学習はこれまでに学習したものを応用できるため、これまでやってきた学習モデルを有効活用できる点がメリットの1つです。こうしたやり方は転移学習とも呼ばれており、ゼロショット学習はその中の1つとされています。
そして、様々なジャンルに応用できるのもゼロショット学習や転移学習のいいところで同じやり方を使って対処できるようになるのがゼロショット学習を利用する上でのメリットと言えます。
ゼロショット学習のデメリット
ここからはゼロショット学習のデメリットについても解説していきます。
ミスマッチの問題
ゼロショット学習では未知の課題などに対して、これまで学んできたモデルを活用する形で対処していくことになりますが、未知の課題とこれまで学んできたモデルの相性が悪いと、結果的に質のいい結果を生み出さない可能性があります。
わざわざゼロショット学習を使ってまでやる必要がなくなり、特定のモデルでしっかりと学習データを用意した方がマシという結果をもたらすことがあるのです。そのため、すべてにおいてゼロショット学習が使えるというわけではありません。
精度はどうしても低くなりやすい
学習データがなくても推察でカバーできるのがゼロショット学習のメリットであると同時に、やはり学習データがあった方が精度は高くなるのは致し方ないことでもあります。そのため、ゼロショット学習に頼るやり方だと精度の問題が出てきてしまうでしょう。
そのため、ゼロショット学習を用いるのであれば、未知のカテゴリーに特定するなど限定的なジャンルで用いるのが一般的であり、効率的と言えます。
ゼロショット学習の応用分野
ここからはゼロショット学習を活用できる応用分野についてご紹介していきます。
自然言語処理
自然言語処理は人間の言葉を分析し、その内容を理解していくためのものです。例えば、文章から感情を読み取っていくという感情分析も自然言語処理の1つとされています。ここでゼロショット学習を用いると、これまでになかった表現や感情に出くわしても推察によって対応できます。
翻訳に関しても自然言語処理の1つですが、あまり用いられることが少ない言語同士の組み合わせであってもゼロショット学習で最大限カバーしていくことが可能です。
音声認識
音声認識は音声情報から文字起こしなどを行っていく際に用いられます。ゼロショット学習が応用できる局面は、データに存在しない人物について文字起こしをする場合や今まで行ってこなかった場所での録音環境における文字起こしなどをする際などです。
未知のジャンルを見極める際に音声認識が利用できるため、例えば、音楽をジャンルごとに分けていく際に音声認識を利用することでより正確に分けていくことができるようになります。
画像認識
画像認識は文字通り、画像を通じて情報を取り出していくやり方です。例えば顔認識の場合では、これまでに情報がない人物が出てきても、ゼロショット学習を通じて認識していくことができます。
これまでの学習モデルから類推する形でゼロショット学習を行い、認識していくことが可能です。
ゼロショット学習とファインチューニングとの違い
ゼロショット学習とは別にファインチューニングと呼ばれるものもあります。ここからはゼロショット学習とファインチューニングの違いについて解説します。
そもそもファインチューニングとは何か
ファインチューニングは、これまで学習したモデルに対して、新しい層を加えることで再び学び直しをさせる手法です。新しい層を設けることでその層を通じて学び直しが行えるため、ゼロから学習させるよりも効率的かつ短時間に新たなモデルを構築していくことが可能です。
例えば、新しい学習データが出てきた場合にはそのデータを加えた形でファインチューニングを行ってブラッシュアップが行えます。ちなみにファインチューニングは微調整とも呼ばれており、既存の学習モデルを有効活用するのに適しています。
機械学習で問題視される過学習に関しても、ファインチューニングを活用すれば過学習をある程度抑えられるのも特徴的です。開発にかける時間を削減できるほか、リソースの節約につなげられるなど、効率的な開発につなげられるのがファインチューニングです。
必要とする学習データの違い
ゼロショット学習は基本的に学習データがなくても問題はなく、既存のモデルを活用する中で推察していくことができます。その一方、ファインチューニングは追加のデータが必要になるなど、学習データがなくても成立するわけではありません。
またゼロショット学習ではこれまで使ってきた学習済みモデルに関しては何も手を加えなくても大丈夫ですが、ファインチューニングでは新たな層を加えて再び学び直しをさせるという点でも違いがあります。
一方で転移学習、ゼロショット学習では対応できないようなモデルも存在します。こうした時にファインチューニングであれば十分に対応することができるため、ゼロショット学習を用いるべき局面、ファインチューニングを用いるべき局面がそれぞれあります。あとはいかに見極めていけるかがポイントとなるでしょう。
まとめ
ゼロショット学習は効率的に開発を行っていけるという点で欠かすことのできない学習手法と言えます。一方でどんなやり方にもメリット・デメリットがあるように、ゼロショット学習を使うべき局面、使わなくてもいい局面があります。
これはファインチューニングにも言えることで、その選択、見極めを正しく行っていくことでより効率的に活用できるようになるでしょう。
ゼロショット学習の場合は画像認識などこれまでなかったようなサービスの開発などにも応用できるため、今後注目されている学習手法の1つと言えます。ゆえにこれから有効活用に期待がされるジャンルです。
ゼロショット学習は、機械がレジ袋に商品を詰め込んでいく際に柔らかそうなもの、硬そうなものを見極めながら詰め込んでいくという技術にも用いられ、その再現に成功したと言われています。完全に機械が代行できる時代に向けて、ゼロショット学習はまさに必要な手法の1つなのです。
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