生成AI活用では日本人の強みが活きる。人とAIの協働でコミュニケーションはどう変わるか

INTERVIEW 020
TOMOKI MORIKAWA
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生成AIを活用することで、コミュニケーションはどう変わるのか。日本最大のAI論文解説メディア「AI-SCHOLAR」を運営し、AI接客自動化サービス「BOTCHAN AI」事業責任者も務める森川 智貴氏にお話を伺いました。森川氏は、生成AIによるゲームチェンジの可能性とともに「生成AIは日本人の強みが活きるツール」だと語ります。数多くの論文から最先端の情報を読み解いてきた視点で、AIが生み出す新しいコミュニケーションの形について解説していただきます。

生成AIは一過性のブームではない。ゲームチェンジの可能性を感じるワケ

ー現在の活動について教えてください。

最新のAIに関する論文をキャッチアップし解説するメディア「AI-SCHOLAR」を運営しています。慶應義塾大学でIoT×ヘルスケアの研究をしていたときのことですが、論文のリサーチや取捨選択、テクノロジーのトレンドを追うことに負担を感じていました。最先端技術の源泉と日本人の橋渡しができたらと思い、「AI-SCHOLAR」を立ち上げました。国内外の最先端のAI論文を日本語でわかりやすく解説することで、AIを社会に広める一助になれればと考えています。

加えて、論文を作成した研究者の皆さんが、自分の研究を世間にアウトプットする機会をつくる役割も担っています。これまでのような論文という手段だけでは、せっかく頑張ったAIの研究成果を世の中に届けることが難しい状況でした。現在、「AI-SCHOLAR」には約200名の修士課程、博士課程のAIライターが在籍しており、研究成果をアウトプットできる場を用意することで、エコシステムを構築しています。

ーこれまで多くの論文を追ってきた立場からみて、生成AIの台頭をどのように捉えていますか?

「AI-SCHOLAR」では直近5年間で1,000本以上の論文を解説してきました。今でも平日は毎日1本の論文を解説しています。そうした中で感じるのは「ゲームチェンジが起きている」ということです。2022年11月の ChatGPTの衝撃以前から生成AIの研究は進んでいましたし、今起きている変化は必然であり、一過性のブームではありません。生成AIはこれから着実に社会実装されていくでしょう。

ーどのような点から、ゲームチェンジの可能性を感じているのでしょうか?

今まではAIのモデルを作ることに大変な労力や検証が必要でした。AIはエンジニアにしか触れることができないものでした。しかし、生成AIはLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)というプリセットされた学習データを利用することで、エンジニア以外の人でも簡単にAIを利用できる環境を生み出しました。大多数の一般の人でもAIが利用できる世界が到来した、ここに大きな可能性があると考えています。

生成AIの活用では、日本人の2つの強みが活きる。

ー現在の生成AIの普及について、どのように捉えていますか?

先進的な企業はすでに生成AIの導入を開始しています。個人でも活用のユースケースが増えてきていますし、これから組織、個人問わず生成AIの活用は加速していくと考えています。私の個人的な意見ですが、生成AIの活用については世界中が一斉にスタートラインに立つ中で、日本人の強みが活きるツールであると考えています。非常に真面目で几帳面な国民性を持つことが、生成AI活用の可能性を広げてくれるでしょう。

ー日本人の強みが活きるというのは、具体的にどのような点が挙げられますか?

大きく2つあると考えています。1つ目はおもてなし力。どのような顧客体験やコミュニケーションを提供すれば、お客さまは心地よいと思うのか。そういった体験価値を追求する国民性が、AIを通じた顧客満足度の向上につながるでしょう。

そして2つ目は、品質管理への意識の高さ。ものづくりだけでなく、体験の提供においても日本人は極めて高い品質をブレずに提供し続けてきました。この背景には、1つ目に挙げたおもてなし力を含め、よい顧客体験を提供するための膨大なトークスクリプトやマニュアルが存在しています。つまり、体験価値がデータ化されているということです。

生成AIの可能性を広げる源泉は、学習のもととなるデータにあります。この2つの強みを掛け合わせることで、日本人ならではの高品質な接客や顧客体験を、AIを通じて提供できるのではないでしょうか。機械との会話という印象を与えない、おもてなしの心で満たされたウェットで人間的な顧客体験を実現できるかもしれません。

AIが生み出す新しいコミュニケーションの形。

ー実際に、生成AIを活用した接客の事例は生まれてきているのでしょうか?

私が事業責任者を務めている生成AIを活用したオンライン接客自動化サービス「BOTCHAN AI」は、ChatGPTのLLMに企業が持つナレッジデータや接客知識を掛け合わせることで、人間のスタッフと同じような接客体験を自動的に提供するサービスです。主にコールセンターでは、お客様から寄せられる同じ質問に何度も答えなくてはなりませんでしたが、こうした繰り返しの接客をAIに任せることができます。これにより、スタッフはお客様の心を動かすようなコミュニケーションの領域に注力することができるでしょう。

また、先ほど述べたような日本人の強みを活かし、AIも進化していくことで、AIによるコミュニケーションが人間に近づいていく可能性もあります。「BOTCHAN AI」では、接客チャットボットとお客様の会話のストローク回数が40回、50回と増えていき、最後にはお客様から「ご丁寧にありがとうございました」とお礼をいただくケースも拝見しています。これは会話の相手が機械だと感じられていないことの現れであり、AIによる会話が人間に近似値化していると言えるでしょう。コミュニケーションが新たな領域に突入したと感じますね。

ーこの事例のような人とAIの協働が、これからますます進んでいくのでしょうか?

私は人間とAIが協働する明るい未来に期待しています。しかし、巷間ではAIに「仕事を奪われる」といった恐れや不安が先行しがちです。そもそも人間は、生存本能から無知のものに対して恐れを抱きます。だからこそ、まずはAIに触れてみる、体験してみるなかで、AIとどのように協働していけそうか、自分に問いかけることが必要ではないでしょうか。

また、多くの日本企業では情報漏洩や著作権保護など、リスクの観点からAIの活用を躊躇している様子も伺えます。AIが事実でないことをアウトプットするハルシネーションという課題も存在します。こうしたネガティブな側面を払拭できれば、今後は多くの企業でAIとの協働が進むのではないでしょうか。

ハルシネーションに対しては、AIが嘘をつかないように、AIにペルソナを持たせる研究も進んでいます。AIがアウトプットする前に、自身のAIの中に組み込まれた弁護士や医師のペルソナが、発言内容に問題がないかをチェックするイメージです。こうしたAIの進化をいち早くキャッチアップし、世の中に発信することで、人とAIの協働を推進していきたいですね。

PROFILE

TOMOKI MORIKAWA

一般社団法人生成AI活用普及協会 協議員/株式会社wevnal BOTCHAN AI事業責任者
慶應義塾大学2016年卒業。医療ITコンサル会社新卒入社、クリニックコンサル会社起業を経て、株式会社wevnalへジョイン。AI論文解説メディア「AI-SCHOLAR」を立ち上げ、現在約200名の修士・博士課程のAIライターが在籍し、日本一のAI専門メディアに。並行し、生成AI活用オンライン接客自動化サービス「BOTCHAN AI」の事業責任者を務め、自身でも生成AIの事業化へ挑戦中。