スパースモデリングとは?特徴や強み・欠点や活用事例、ディープラーニングとの違いをわかりやすく解説
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皆さんはスパースモデリングをご存じですか?スパースモデリングは近年注目されている技術の1つで、ディープラーニングが抱える課題を解決するかもしれない技術として話題を集めています。
本記事ではスパースモデリングとは何かにスポットを当て、スパースモデリングの特徴や強み、欠点などをご紹介していきます。
スパースモデリングとは?
スパースモデリングとはどういうものなのか、その意味や基本的な情報などをご紹介していきます。
スパースモデリングの意味
スパースは英語でSparseと書きますが、日本語では「まばら」、「希薄」などの意味があります。この言葉から転じて、必要とされるデータのみを取り出し、そのわずかなデータから学習を行っていくという学習手法を指します。
スパースモデリングの歴史
スパースモデリングは1996年に誕生した考え方で、後程ご紹介するLassoの誕生からスパースモデリングの考え方が広まっていきました。その後、ブラックホールの撮影など、天文学の分野で使われるようになるのは21世紀に入ってからです。
ディープラーニングが持てはやされる中で、ディープラーニングならではのデメリットが見え隠れし始めるとスパースモデリングの強みが輝き始めることになりました。まだビジネスでの応用は少ないものの、ディープラーニングではない形で開発を行いたい企業にとって注目したい技術になりつつあります。
スパースモデリングとディープラーニングとの違い
スパースモデリングとディープラーニングは似たようなものですが、実際には大きな違いがあります。その違いをまとめました。
データの扱いの違い
スパースモデリングとディープラーニングとの違いにおいて決定的なのはデータの扱いの違いです。スパースモデリングでは必要なデータのみを抽出して活用していきますが、ディープラーニングはとにかくデータをかき集め、データが多ければ多いほど質の高い結果をもたらす仕組みになっています。
スパースモデリングではデータが多かろうが少なかろうが、必要な情報さえ抽出できれば問題ありませんが、ディープラーニングはとにかくデータの量が必要です。データをどれだけ集めないといけないかという点で、スパースモデリングとディープラーニングとの違いには決定的な違いがみられます。
アノテーション作業の違い
スパースモデリングとディープラーニングとの違いでは、アノテーション作業の違いも挙げられます。アノテーションは、データのラベル付けを行う作業であり、ディープラーニングでもスパースモデリングでも必須とされます。いわばデータすべてにラベルを貼っていく形です。
ディープラーニングは膨大なデータすべてにアノテーション作業を行うので、それだけで大変です。しかし、スパースモデリングであればデータがある程度抑制されるため、アノテーション作業もそこまで必要ではありません。このあたりの違いがディープラーニングの欠点を補う要素となります。
スパースモデリングの特徴
ここからはスパースモデリングに関する特徴についてご紹介します。
入力と出力に着目する
スパースモデリングではいかに必要なデータを抽出していくかがポイントになります。スパースモデリングの場合、データが持つ関係性に注目し、入力されたデータ、出力されるデータの関係性から、必要な情報を抽出し、その情報で学習を行っていきます。
本当に必要なものだけをピックアップするため、無駄なものを排除し、無駄なものに用いてきたリソースを削り落とせるため、省エネで動かしていくことができるというわけです。
Lassoの存在
重要な情報だけをピックアップしていくスパースモデリングですが、これを可能にした手法がLasso(least absolute shrinkage and selection operator)と呼ばれるやり方です。Lassoはデータを選び、推定していくことを自動化させ、取捨選択と推定を並行して行うことができます。
過学習を避ける
スパースモデリングの特徴は過学習の防止も挙げられます。ディープラーニングでは大量のデータから学習を行うため、めちゃくちゃなデータにも対応せざるを得なくなり、結果的に質を落とした結果が出されることがあります。これが過学習です。
Lassoを用いることで、ある程度の制約・縛りを与えた中で学習を行うため、過学習を防ぎ、少ない情報から答えを導くことができます。
スパースモデリングの強み
ここからはスパースモデリングが持つ強みについて解説していきます。
学習データにかけるリソースを抑えられる
AIを開発する際に絶対に欠かせないのが学習データです。しかし、この学習データをどれだけ集めればいいかがわからず、ビッグデータを集めなければならないと考え、結果的に断念してしまうケースもあります。学習データが多くなければ質の高い結果は出ないという考えは間違いではありませんが、コストや時間などのリソースが限られていると結果的に断念せざるを得ません。
その点、スパースモデリングであれば少量のデータでも十分な成果をもたらすことができます。これならば、リソースが限られる状況でも何ら問題がありません。ビッグデータがなくてもAI開発が行えます。
ハイパフォーマンスなマシーンがいらない
ビッグデータを活用しようとすると、とにかく大量のデータを捌いていくシステムが必要になります。またハイパフォーマンスなマシーンを用いると電力消費も相当かかるなど、開発環境の整備をしっかり行ってからでないと先に進まないケースが想定できます。
スパースモデリングの場合、少量のデータで済む分、ハイパフォーマンスなマシーンは必要ありません。自前の環境で十分開発が行えるのは魅力的であり、本格的な開発をするのに完璧な環境を整える必要がなくなるのはスパースモデリングの長所と言えるでしょう。
プロセスがわかりやすい
ディープラーニングが抱える問題点は大量のデータを用いて学習する分、なぜその答えに至ったのかのプロセスがわかりにくい点が挙げられます。数学の問題でも計算式をチェックすることでその答えに至ったプロセスを理解できますが、この計算式が膨大過ぎて人間が瞬時に読み解くのが非常に困難な状態と言えます。
その点、スパースモデリングは必要な情報のみを抽出しているので、計算式がシンプルになりやすい傾向にあります。プロセスがわかりやすいため、答えに至った流れが読み解きやすいのがスパースモデリングの利点と言えるのです。
スパースモデリングの欠点
現状ではスパースモデリングの欠点はさほどないのが実情ですが、あるとするならば、スパースモデリングの欠点を語るだけの実績がまだそこまで多くないのが欠点と言えます。ビジネスにおいてスパースモデリングを応用しているケースは少なく、医療系など限られた分野で使われている程度です。
ディープラーニングと比べ、スパースモデリングはまだまだ一般的ではなく、企業においても有効的に活用しているケースが乏しい分、欠点を見いだせていない、もしくは致命的な欠点が示されていないのが今の状況です。
どんな技術にも欠点は存在するものですが、スパースモデリングの場合、まだ見つかっていない段階と言えるでしょう。ゆえにスパースモデリングを必要以上に持てはやすよりも、まずはスパースモデリングを使ってみてどのように応用していくかを考えた方がいいと言えます。
スパースモデリングの活用事例
スパースモデリングを実際に活用した事例についてもご紹介していきます。
MRI画像
スパースモデリングが用いられている身近な事例としてMRI画像があります。MRIで撮影する際、時間をかけてじっくりと撮影すれば当然はっきりとした画像が出ます。しかし、閉鎖空間で身体を固定され、長時間待ち続けるのは苦痛であり、閉所恐怖所などを抱える人が敬遠する要素となるでしょう。
検査時間を短くする分、データこそ少なくなりますが、スパースモデリングを利用すれば時間をかけたケースと比べてもそん色のない画像に仕上がります。画像の鮮明度を高めるのにスパースモデリングが長けており、ブラックホールの撮影にもスパースモデリングが使われたことがあるのです。
MRIの撮影においてこれまでかけていた時間を抑制し、しかも、しっかりとした画像となって仕上がるため、医療の現場において重宝される技術と言えます。
品質管理
スパースモデリングは品質管理の現場でも用いられています。日本の場合、既に不良品と呼ばれるものが少なく、どういうものが不良品なのかというデータが乏しく、まして量をそこまで作らないケースではデータ集めに苦慮することがあるのです。
その点、スパースモデリングは量が少なくてもその限られたデータの中で学習ができるため、品質管理に応用することができます。またあえて品質に問題がないもので学習を重ね、不良品を検出していくというやり方も存在します。
しかも、なぜその結果に至ったのかというプロセスも説明しやすいので、根拠をチェックする中で試行錯誤につなげられるのもスパースモデリングの魅力です。
まとめ
スパースモデリングはディープラーニングの欠点を大部分補っていると言っても過言ではない技術の1つです。リソースも必要としないため、特に画像を用いるケースであれば活用を視野に入れるべきものと言えます。
一方でビジネスに応用している企業は少なく、世間的な知名度もそこまで高くありません。ゆえにスパースモデリングの活用が有効的な分野で先手を打って応用できれば、ビジネスチャンスにつながる可能性も十分に考えられると言えるでしょう。
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