ディープラーニングを利用した物体検知(物体検出)とは?画像分類との違いや最新事例を徹底解説
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皆さんは物体検知をご存じですか?物体検知は加速度的に進化を遂げる人工知能、特にディープラーニング技術の活用によって発展している分野の1つです。物体検知はどのように行うのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
今回は物体検知とは何かを中心に、物体検知で用いられる手法や画像分類との違い、現状の課題などをご紹介していきます。
物体検知とは?
物体検知とはどういうものなのか、物体検知の基本的な情報をご紹介していきます。
物体検知の概要
物体検知は物体検出とも呼ばれています。これらは事前に取り込んでおいた画像から、その物体の位置や場所、数などを特定していく技術です。
物体の種類に関しては分類の作業で行うことは可能ですが、物体検知ではその物体がどこにあるのかというところまでを正確に読み取っていくのが特徴です。
物体検出は製造業や医療の現場などで用いられているほか、デジタルカメラなど被写体を見つける時などにも用いられている技術です。
物体検知の基本的な仕組み
物体検知に関してはバウンディングボックスを作る中で物体を検知していくというのが主な仕組みです。
バウンディングボックスとは
バウンディングボックスは、画像などにある物体を囲んだ際の領域を指します。バウンディングボックスは長方形で物体を囲む形になり、その囲んだ中で認識や分類、カウントなどを行います。
このバウンディングボックスを有効的に活用するにはアノテーションが欠かせません。アノテーションはデータにラベル付けを行う作業を示しており、この作業によって物体が何であるかを知ることができます。
後程ご紹介する深層学習などを用いていく際にも、アノテーションなどの作業は必須と言えます。
ディープラーニングを利用した物体検知
物体検知にはディープラーニングが用いられることがあります。ここではディープラーニングを利用した物体検知についてご紹介します。
R-CNN
R-CNNは、今まであった物体検知の手法を画像認識モデルであるCNNに代えたシステムです。特徴は、事前に何かしらの物体が存在するであろう場所を示すことで、より速く特定していくことが可能になります。
Fast R-CNN
「Fast R-CNN」は、その名の通り、R-CNNの進化版であり、R-CNNをより速くしたものとなります。R-CNNでは常にCNNを動かして認識させていましたが、R-CNNでは事前に特徴量がある領域だけをピックアップし、認識を進めていきます。
R-CNNではいつも認識の段階でCNNを動かしていましたが、その必要性がなくなるため、その分計算量をかなり抑制することが可能です。
Faster R-CNN
「Faster R-CNN」 は、こちらも名前の通り、Fast R-CNNをさらに速くしたシステムです。最初に検出したいものが物体かどうかを学習してから、何が映し出されているかを判断していきます。
物体が存在するのか存在しないのかを最初に学習することで、画像処理の速度が上がっていくのが特徴的です。
YOLO
YOLO (You Only Look Once)は、物体検知の論文として示されたもので、パッとみて物体を識別していくものとなっています。YOLOには人生は1回限りというYou Only Look Onceの略称で、そこから「見るのは1回限り」という意味に置き換えて考えられました。
そもそも人間は物体をパッとみるだけで物体検知ができるようになっています。この構造をシステムとして作り上げていったのがYOLOです。物体検知と識別の作業を同時に行い、処理にかかる時間を減らすのが狙いです。
SSD
SSD (Single Shot Detector)は、機械学習を利用した物体検知の1つで、ベースにはディープラーニングがあり、速い速度で物体検知を行うほか、事前に物体の学習を行って、検知させたい物体を決めておいてから検知させていくことが可能です。
SSDの特徴にはデフォルトボックスというものがあり、長方形の枠を活用しながら、枠との距離などから物体検知を行っていきます。
物体検知と画像分類との違い
ここからは物体検知と画像分類の違いについてご紹介します。
そもそも画像分類とは
最初に画像分類についてご紹介します。画像分類は、画像全体をチェックした際に何が存在しているのかを認識して分類していく手法です。
画像に動物がいるとすれば、それが犬なのか猫なのか、鳥なのかを分類していきます。基本的には犬や猫、鳥が持つ特徴量があって、その特徴量に合致、もしくは近ければ特定の者に分類していくというやり方です。ディープラーニングの登場でその正確さは増しています。
分類とカウントの違い
画像分類の場合は、画像の中に何が存在するのかを示して、分類していくものです。一方で、物体検出はもちろん何が存在するのかはわかった上で、その物体がいくつ存在するのかを検出することができます。
例えば、動物であれば猫が何匹いて、犬が何匹、鳥が何羽いるかをカウントしていくことができます。いわば画像分類は文字通り分類ができ、物体検知は物体のカウントができるという違いです。
物体検知の活用事例
ここからは物体検知に関する活用事例についてご紹介していきます。
AIを使った教習所のシステム
自動運転の技術は年々進化を遂げ、車を動かすという分野に特化すれば既に成り立っていると言えます。そんな中でAIを活用し、教習所で活用していく運転郷愁のシステムが存在します。
走っている位置が示されるほか、音声で指示を出してくれるため、混乱する必要がなくなるほか、運転を後から振り返られるため、あの時何をすればよかったかなども示されます。万が一の際の補助ブレーキも自動で作動するなど、安全です。
世界中で物体検知を活用して自動車教習で用いられているケースが増えており、あのマイクロソフトも運用しています。ディープラーニングを使っているからこそ、より精度も高くなり、誤作動などの心配もなくなるほか、教習所に対するイメージを大きく変えられるシステムとも言えるでしょう。
画像を使った医療的な判断
近年はレントゲンやMRIなど画像を使って医療的な判断を行うAIが増えています。医療画像の解析においては、画像分類や物体検出、セグメンテーションでそれぞれやり方が異なります。
例えば腫瘍の有無などを判断する場合は、画像分類だと学習済みモデルで腫瘍の有無を学習させてから判断させます。セグメンテーションだとピクセルなどで腫瘍の形を分割していき、その形で認証していく流れです。
物体検出は腫瘍がある場所をボックスで囲んで、どの位置に腫瘍があるのかを検出しながら判断を行います。データの品質、過学習などの技術的な問題はありますが、日々改良を重ねて画像を活用した医療的な判断の向上につなげている段階です。
現状の物体検知の課題
物体検知はとても便利なシステムですが、一方で課題もあります。ここからは物体検知の課題を解説します。
用意するデータの問題
例えば、犬や猫のように膨大なデータがあれば、これらの物体検知は特に問題はありません。しかし、腫瘍の有無やその腫瘍が何の病気の腫瘍かを始め、難病につながるようなデータに関しては決して膨大にあるとは言えません。
膨大なデータがないとデータに偏りがみられる場合があります。この場合に正確な判断を行えない可能性があるのです。用意するデータが万全でないと物体検知がうまくいかない可能性があります。
しかもデータそのものが重なっている、不鮮明である、そもそもラベルが間違っているケースもあります。そのため、学習の前に「データクレンジング」を行う必要があるのです。データをきれいにする作業がデータクレンジングで、質を高めるために必要です。
こうしたデータクレンジングなどにもコストがかかるので、そのコストをどうするかも企業が頭を悩ませる部分になっています。しかしながら、質の高い技術を生み出していくには避けることは許されないコストであることも事実です。
認識と検知のバランス調整
物体検知ではまず物体を認識していくことが重要です。そもそも認識ができなければ検出どころではないからです。しかし、何でも認識していくと、本来必要のないものまで検出しなくてはならなくなります。
要するにたくさん検出すれば、本来検出すべきものを見落とす、見逃す可能性まであるのです。認識は必要ですが検知しすぎるのも問題です。このバランスをどうしていくかも問われています。
プライバシーの問題
先ほどの医療系の画像であれば、腫瘍を持つ人のレントゲン写真などを活用しており、かなりセンシティブな情報であることは間違いありません。ガンを始め、難病などの病気を抱えている方の情報を利用している状態と言えます。
プライバシーを守った上で情報の活用を行わないと大変な事態を招く可能性が考えられます。プライバシーをいかに守るかも大事であるとともに、物体検知のシステムを開発する際の取り扱いについても事前に議論を重ねる必要があります。
まとめ
物体検知・物体検出に関しては、画像や映像の中から特定の物体に関する位置や種類、物体の個数といったものを正確に判断していく技術であり、非常に高度です。だからこそ、多くの業態で活用が期待され、人工知能がより人間に近づいていくことを可能にさせています。
一方で取り組むべきこと、改善すべきこともまだまだ多いのが実情です。いかにそれらをなくしていけるのかが問われますが、その点をクリアしていけばより便利な未来が待っていることでしょう。
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