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LSTM(長・短期記憶)とは?自然言語処理に必要な仕組みの特徴やRNNとの違いをわかりやすく解説

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LSTM

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近年では、幅広い分野でAIを活用した技術が注目を集めており、LSTM(長・短期記憶)もその1つです。

LSTM(長・短期記憶)は、主に自然言語処理や事例列予測に用いられることが多く、今後も多くの場面で活用されていくことが予想されています。

今回は、LSTM(長・短期記憶)の特徴や仕組み、RNNとの違いについてわかりやすく解説します。

LSTM(長・短期記憶)とは?

LSTM(長・短期記憶)とは、「Long Short Term Memory」という言葉の略称で、ニューラルネットワークの1つです。

元々、RNN(リカレントニューラルネットワーク)というLSTMと同じニューラルネットワークを改良して開発されたものです。

LSTMは、主にシーケンスデータの長期依存関係を学習することができるモデルなので、自然言語処理や時系列予測に用いられることが多くあります。

LSTMの仕組み

LSTMは、内部ゲートというメカニズムを3つ持っており、そのゲートが情報を抑制する働きを持っています。

具体的なLSTMの仕組みは主に以下の通りです。

忘却ゲート(Forget Gate)

忘却ゲート(Forget Gate)とは、名前の通り「忘れる」ための情報を決定するゲートのことです。

この最初のステップで、不必要な情報を選定し忘れることによって、LSTMは古くなった不要な情報を削除し、新しい情報を効率的に取得できるようになります。

また、この忘却ゲートはシグモイド関数という「値を0〜1の間に制限する関数」を使用して制御されます。

このシグモイド関数は、0で「完全に忘れる」1で「完全に保持する」ことを表しています。

LSTMは、この忘却ゲートによって時間の長さに関係なく効率的な学習を進めることが可能です。

入力ゲート(Input Gate)

入力ゲート(Input Gate)とは、新しい情報を処理(インプット)するためのゲートです。

主に、新しい情報をどれだけ保存するか決める「ゲート部分」と新しい情報の候補を生成する「情報部分」の2つのゲートで構成されています。

ゲート部分では、忘却ゲート同様にシグモイド関数を使用して0〜1までの値を出力します。

ゲート部分のシグモイド関数では、0で「情報を全て通さない」1で「情報を全て通す」ことを表しています。

情報部分では、新しい候補の情報をtanh関数という「値を-1〜1までの間に抑制する関数」を使用して生成します。

LSTMは、入力ゲートが持つ以上の仕組みによって新しい情報を選定して取得・学習することが可能です。

出力ゲート(Output Gate)

出力ゲート(Output Gate)とは、出力するものを処理するためのゲートです。

出力ゲートがシグモイド関数を使用して出力した値は、セル状態にそのまま適応され、記憶セルの情報がフィルタリングされます。

出力ゲートのシグモイド関数は、0で「出力が全てなくなる」1で「出力する全ての情報が伝達される」ことを表します。

出力ゲートによって、LSTMは出力するデータを選択して効率的にシーケンスデータの長期依存関係を学習することが可能です。

LSTMの特徴

特殊なゲートの仕組みを持っており多くの分野で活用できるLSTMには、主にどのような特徴があるのか気になる方も多いです。

ここでは、LSTMの特徴について解説します。

多くの場面で応用できる

LSTMの1つ目の特徴は、多くの場面で応用できることです。

主に、自然言語処理や時系列予測、などのさまざまな分野で活用されており、自然言語処理分野では文章の生成・機械翻訳・感情分析などに利用されています。

さらに、音声データから高い精度で音声を認識しテキストに変換することもできるので、日常生活で幅広く活用できます。

LSTMは、以上のような場面以外にも医療分野や金融、科学分野でも分析・解析などを目的に重要視されている技術です。

ゲート構造がある

LSTMは、内部ゲートという構造を持っていることが特徴的です。

上記でも解説した、「忘却ゲート」「入力ゲート」「出力ゲート」の3つの内部ゲートがそれぞれ異なる役割を果たしています。

このゲート構造があることで、LSTMはAI機械学習を効率化しシーケンスデータの長期依存関係の学習を可能にしています。

さらに、不要な情報や古い情報を効率的に削除し、新しい情報を収集する仕組みによって、メモリをより効率的に利用することが可能です。

「ゲート構造がある」というLSTMの特徴は、数あるニューラルネットワークの中でも優れていると評価されている理由の1つでもあります。

RNNが抱える問題を解決できる

LSTMは、長期的依存性問題を解決させるためにRNNを改良して作られたものです。

長期的依存性問題とは、現在の情報が過去の情報に依存してしまうことであり、RNNの学習中に発生し学習を妨げてしまいます。

これは勾配消失問題としてRNNの大きな課題でしたが、LSTMにはゲート構造があることでその問題を解決できます。

内部ゲートによって、不要な情報を削除したりフィルタリングできるので、情報を適切に管理し、長期的依存関係を学習することが可能です。

そのため、幅広い分野での活用が実現しています。

LSTMの欠点

LSTMには、さまざまな特徴を持っており今後も多くの分野で活躍することが期待されていますが、いくつか欠点もあります。

ここでは、LSTMの欠点について解説します。

理解することが難しい

LSTMは、内部の状態が複雑になっているので、理解することが難しいです。

内部には、3つの内部ゲートやセル状態を持っており、それぞれの動作が相互作用することで学習を進めていきます。

そのため、実際に活用する場合や改良を加える場合に、しっかりと内部状態を解釈して理解することが難しいです。

ただ、以上の欠点を解決させるツールやテクニックの開発が進んでいるので、今後は欠点として扱われなくなることでしょう。

過学習のリスクがある

LSTMには、過学習のリスクがあります。

過学習とは、学習に利用したデータのみに過剰に適応することで、汎用性が低くなり新しいデータにうまく対応できなくなることです。

LSTMは複雑な構造になっているので、この過学習のリスクが高いことがあります。

ただ、現在ではLSTMの過学習を防ぐためのテクニックがいくつか存在しているので、適切にテクニックを利用することでLSTMの学習能力を高く保つことが可能です。

そのため、過学習を防ぐテクニックを理解してリスクヘッジをしましょう。

計算量が多い

LSTMは、内部構造が複雑になっており長期的依関係の学習を行うので、計算量が多くなる場合があります。

多くの分野で性能と機能性の高さから重宝されている状態ですが、現時点ではこの欠点がLSTMを使う利点を上回る可能性があります。

現在では、この欠点を解決させるための技術やシステムの開発が進んでいますが、まだ完璧には解決できません。

そのため、計算リソースを別のハードウェアなどに代替させるなどの施策が必要です。

LSTMと他のニューラルネットワークとの違い

ニューラルネットワークの1つでるLSTMは、自然言語処理や時系列予測に優れており、さまざまな分野で活用されることが多いです。

そんなニューラルネットワークはLSTM以外にもいくつか存在しています。

ここでは、LSTM以外のニューラルネットワークであるRNNとGRUの違いについて解説します。

LSTMとRNNとの違い

RNNとは、「Recurrent Neural Network(リカレントニューラルネットワーク)」という言葉の略称で、LSTMと同様にニューラルネットワークの1つです。

また、回帰型ニューラルネットワークといわれており、自然言語処理や時系列予測を行うことができます。

ただ、長期的依存性問題があり、LSTMのように効率的にシーケンスデータの長期的依存関係を学習することが困難です。

さらに、RNNにはLSTMにある内部ゲート構造がないので、LSTMのように情報の取捨選択が行えません。

そのため、LSTMとRNNは、構造や能力などが大きく違います。

LSTMとのGRUとの違い

GRUとは、「Gated Recurrent Unit」という言葉の略称で、RNNの1つでもあります。

LSTMと同じニューラルネットワークであり、勾配消失問題を解決させるためのゲート構造も備えています。

ただ、GRUのゲート構造は、過去の情報をどれだけ保持するか決める「更新ゲート」と過去の情報が現在の情報にどれだけ影響を与えるか抑制する「リセットゲート」の2つになります。

そのため、LSTMとはゲートの数やゲートの役割などが違います。

LSTMの活用事例

LSTMは、さまざまな分野で活用されている技術の1つですが、具体的な活用事例を知らない方は少なくありません。

ここでは、LSTMの活用事例について解説します。

文章生成

LSTMは文章生成において活用されています。

LSTMは、完全な文章が用意されていない状態であっても、前の単語やフレーズを確認することで、それを元に単語を予測することが可能です。

さらに、LSTMは情報を長く記憶しておくことができるので、長文であっても忘れることなく生成できます。

そのため、LSTMを活用することで、実際に人間が作成したような自然な文章を生成させられます。

株価予測

株価予測もLSTMを活用することで、効果的に行えるようになります。

LSTMに、株価の時系列データ(過去〜日間の株価動向)を学習させて、精度が向上するまで何度もトレーニングを繰り返し行います。

そして、高い精度での予測が行えるようになれば完了です。

ただ、LSTMでの株価予測はPythonを用いるので、ある程度のプログラミングの知識が必要になります。

LSTMが利用できるツール

LSTMを利用できるツールには、主に以下3つがあります。

  • PyTorch:Meta社(元Facebook社)が開発したオープンソースの機械学習ライブラリであり、大規模なデータや複雑なモデルでも高速計算ができる

公式ドキュメントやチュートリアルなどのリソースが提供されているから、初心者から上級者まで取り入れやすい

  • Keras :Pythonによって記述されたオープンソースのニューラルネットワークライブラリで、初心者でも扱いやすいAPIで提供されている

豊富なリソースを提供しており、柔軟性やカスタマイズが高いことから開発効率の向上が期待できる

  • Python:LSTMの実装で最も利用されているプログラミング言語の1つ

多くのが扱っており現在でも高い人気を誇っているから初心者でも学習しやすく、開発効率やAI学習で広く活用されている

LSTMを利用してみたいと考えている方は、以上3つのツールから自分に適したものを選んで使ってみることをおすすめします。

まとめ

LSTMは、現在多くの分野で幅広く活用されており、今後もさまざまな改良や対策が進められていくことでしょう。

さらに、LSTMが利用できるツールも多く提供されているので、AI分野に関心のある方が気軽に活用することが可能です。

これからAI学習を始める方やLSTMに関心のある方は、ぜひ今回の記事を参考にしてみることをおすすめします。

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