アンサンブル学習とは?概要や仕組み・手法やアルゴリズム|スタッキングやブースティングまで簡単に解説!
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皆さんはアンサンブル学習をご存じですか?アンサンブル学習は機械学習を行う際により効果的に成果を出すために行われる学習方法の1つです。アンサンブル学習にはどのような効果があるのかをご紹介しています。
本記事ではアンサンブルとは何かを中心に、アンサンブル学習の仕組みや手法、メリット・デメリットなどを解説します。
アンサンブル学習とは?
アンサンブル学習とはどういうものなのか、ここからはアンサンブル学習の意味などを中心に基本的な情報をご紹介します。
アンサンブル学習の意味
アンサンブル学習のアンサンブル(ensemble)には集団、音楽用語における合唱などの意味があります。こうした事から転じてアンサンブル学習は、いくつもの機械学習モデルを組み合わせていくことで、1つの機械学習モデルよりもより高度な予測性能を持たせるという方法です。
いくつもの機械学習モデルを活用していくことで、それぞれの機械学習モデルが持っている弱点を打ち消し合って、より強い機械学習モデルを作り上げることが可能になります。
アンサンブル学習の仕組み
ここからはアンサンブル学習がどのような仕組みで行われるのか、そのメカニズムについてご紹介していきます。
三人寄れば文殊の知恵的な仕組み
皆さんは三人寄れば文殊の知恵ということわざをご存じでしょうか?三人寄れば文殊の知恵とは、平凡な人間が三人集まれば良い知恵が浮かぶということわざです。アンサンブル学習はまさに「三人寄れば文殊の知恵」的な学習方法です。
実際に同じような機械学習モデルをいくつか活用し、その中で多数決を行う中で単体で予測を行うよりも正答率が上がります。アンサンブル学習ではこの数をどんどん増やすことにより、正答率を高めるなどしてより高性能なシステムを作り上げていきます。
アンサンブル学習の概念
アンサンブル学習を知る上である概念を2つ覚えておく必要があります。1つはバイアス、もう1つはバリアンスです。バイアスとバリアンス、2つの概念についてご紹介します。
バイアス
バイアスとは、機械学習モデルの予測値と実際値の差を指します。予測した数値と実際の数値に差があまりなければ、それだけ正確な予測ができていると言えます。逆に数値の差が大きいとそれだけ正確ではない予測となっており、何らかの改善が必要となるのです。
ただ、予測値と実際値がかなり異なることは十分にあり得ることでもあります。バイアスの差が広がる状況はそれだけ機械学習の練度が足りないことを意味しており、何度も学習を行わせないといけません。その中で精度をどんどんと高めていき、誤差を少なくしていくことで正確な数値が出せるようになります。
バリアンス
バリアンスは予測値としての数値のまとまり具合を指します。予測値はできる限りばらつきが少ない方がよく、誤差の幅が小さい方がいい状態となります。そのため、誤差の幅が大きいとそれだけ精度が高くないことを意味するのです。
バリアンスの幅が広くなってしまう要因には訓練をやり過ぎること、いわゆる「過学習」が原因となります。訓練が足りなくてもバイアスの問題が出てきますが、過度にやり過ぎると今度はバリアンスの問題が生じるため、注意が必要です。
バイアスとバリアンスのバランスが重要
バイアスとバリアンスの関係性はシーソーのようにどちらかが上がり過ぎるとどちらかに影響を及ぼす状態になりやすいです。そのため、どちらもほどほどの状態にするため、絶妙なバランスを目指していくことが重視されます。
どちらか一方を良くするのはもちろん大事なことですが、やり過ぎれば一方に悪影響を与えることは明らかなので、どちらもやり過ぎないことが重要です。特に過学習はついついやりがちだからこそ、自制していくことも必要になります。
アンサンブル学習の手法
ここからはアンサンブル学習の手法についてご紹介していきます。アンサンブル学習の手法にはバギング、ブースティング、スタッキングの3つがあります。それぞれの手法についてご紹介していきます。
バギング (Bagging)
Baggingはbootstrap aggregatingの略称であり、学習用データを集めてブートストラップ標本を作成し、それぞれの学習器を活用して学習を行っていくやり方です。
それぞれの機械学習モデルの予測を行い、平均化もしくは多数決で組み合わせていきます。バギングの特徴はバリアンスを小さくさせることができ、過学習を避けることが可能な点です。
ブースティング (Boosting)
Boostingには上昇や応援などの意味がありますが、ここで用いられるブースティングは、弱い学習器のシステムを活用して強い学習器に変えていくやり方です。
弱い学習器を組み合わせることで「重み付け」に変化が出ます。「重み付け」とは統計でも用いられるものの1つで、重要度を点数化していくやり方です。弱い学習器を活用し、誤った分類をした場合には重みが増え、正解なら減らしていくという形にすることで、強い学習器に変えられるという方法となります。
スタッキング (Stacking)
Stackingには積み重ねていくという意味があり、この場合のスタッキングもいくつもの学習器を組み合わせていき、これらの予測をまとめるメタモデルを作っていくことで学習を行っていく方法です。
まず最初にたくさんの学習器を作っておき、この学習器たちが出した予測をもとにして最終的に1つのモデルを作ります。さらにモデルを作ってより精度の高いものを作ることも可能です。時間こそかかりますが、このやり方の方が精度は高くなりやすいと言えます。
アンサンブル学習のメリット
アンサンブル学習にはいくつかのメリットが存在します。ここではそのメリットについてご紹介していきます。
予測性能の向上
1つだけでは精度が低い学習器もいくつも集まることでその予測性能を高めることが可能です。それぞれの学習器には弱い部分があるものですが、いくつもあればそれぞれの弱い部分を打ち消すことが可能です。
打ち消していくことでそれぞれの学習器の長所を生かしながら予測性能の向上につなげられるため、より精度の高いものを構築できるというわけです。
過学習を減らせる
アンサンブル学習の概念としてバイアスとバリアンスがありますが、バリアンスは過学習によって問題が生じやすい点が挙げられます。1つのモデルを訓練しすぎるとバリアンスが生じやすくなり、過学習につながりやすいとされます。
その点、アンサンブル学習であればそれぞれのモデルが過学習をする可能性を軽減できるため、全体的に安定感のある状態、予測性能を確保することが可能です。
汎用性を高められる
アンサンブル学習を行うことでどんなデータを活用しても対応できるような汎用性の高いものを作り出すことが可能です。汎用性が高ければそれだけ応用もしやすくなり、活用しやすくなると言えるでしょう。
アンサンブル学習のデメリット
アンサンブル学習のメリットがある一方、デメリットも存在します。ここではアンサンブル学習のデメリットについてご紹介していきます。
リソースが必要
アンサンブル学習を行うにはいくつもの機械学習モデルが必要になり、それぞれの訓練も欠かせません。すると、計算リソースが必要になるほか、訓練を行う時間も必要になるでしょう。特に大規模な形で行うとなれば、リソースの割き方もそれだけ派手になっていきます。
時間などのリソースも必要になるので、一定のリターンが得られそうかどうかなどを見た上で判断を迫られることになります。
モデルの解釈性の問題
アンサンブル学習を行うことで問題になるのは解釈性の問題です。解釈性は、どのような形で答えを導いたかを理解しやすい形で説明できるかどうかを示す性質を指します。
1つの機械学習モデルであれば、どのように結論を出したかは理解しやすく説明もしやすいですが、いくつも組み合わせてしまうとその説明がしにくくなります。解釈性が低いと時に適切とは言えないような判断をする可能性があるため、解釈性をいかに確保するかが問題になります。
過学習の可能性がある
過学習を軽減できるのがアンサンブル学習のメリットですが、一方でやり方によっては過学習を招くことがあります。データの偏りがあるなど一定の条件下で起こりやすく、適切な設定をしないと過学習のリスクがあるため、注意が必要です。
アンサンブル学習が用いられる場面
アンサンブル学習はどのような場面で用いられるのかについてご紹介していきます。
分類問題の向上
アンサンブル学習は、分類問題において高精度につなげることができます。分類問題とは画像など連続しない値を予測していく問題を指します。わかりやすく例えば、イヌかネコかを分類させる場合に用いられます。
分類問題と対極にあるのが回帰問題で、こちらは連続する値、数量がメインの方法です。画像認識などの精度を高めていく際にアンサンブル学習が存在します。
不安定なデータへの対処
機械学習をさせる際には色んなデータが入ってきます。時にめちゃくちゃな数字を含んでいる場合など、1つの機械学習モデルでは過剰な反応を示す恐れがあります。アンサンブル学習の場合はいくつもの機械学習モデルを組み合わせるため、過剰な反応を防げます。
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