DCGAN(深層畳み込み敵対的生成ネットワーク)とは?特徴やメリット、GANとの違いを解説
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高い精度で画像生成ができる生成モデルの「GAN(敵対的生成ネットワーク)」には、いくつか種類があります。
GANは、現在さまざまな分野で活用されており、今後も活用し続けられていく可能性が高いです。
そんなGANの中でも特に高い精度で画像生成が行えるものに「DCGAN(深層畳み込み敵対的生成ネットワーク)」があります。
今回は、DCGAN(深層畳み込み敵対的生成ネットワーク)の特徴やメリット、GANとの違いを解説します。
DCGAN(深層畳み込み敵対的生成ネットワーク)とは?
DCGAN(深層畳み込み敵対的生成ネットワーク)とは、「Deep Convolutional Generative adversarial networks」という言葉の略称で、GANの1種のことです。
2014年に機械学習分野の科学者であるイアン・グッドフェローを含む機械学習研究チームによって発表されました。
主に、GAN(敵対的生成ネットワーク)に「CNN(畳み込みニューラルネットワーク)」というニューラルネットワークを加えて改善されたモデルになります。
GANよりも高い精度での画像生成が行える生成モデルとして注目を集めており、今後さまざまな分野での活用が進んでいくことが予想されています。
DCGANの特徴
DCGANは、「Generator(生成ネットワーク)」と「Discriminator(識別ネットワーク)」という2種類のニューラルネットワークを戦わせながらAIのデータ学習を進めていく仕組みです。
以上2種類のニューラルネットワークによって、画像データの真偽を判断していくことで、生成された画像データが徐々に本物の画像データに近づいていきます。
さらに、CNNの複雑な構造によって人間の脳のようなアルゴリズムを実現することができ、画像処理の精度を大幅に向上させることが可能です。
CNN(畳み込みニューラルネットワーク)
CNN(畳み込みニューラルネットワーク)とは、「Convolutional Neural Network」という言葉の略称で、多層構造のニューラルネットワークのことです。
主に、「全結合層」「畳み込み層」「プーリング層」の3層から構成されており、画像認識において高い精度を発揮できるニューラルネットワークの1つです。
DCGANとGANとの違い
GAN(敵対的生成ネットワーク)は、「Generator(生成ネットワーク)」と「Discriminator(識別ネットワーク)」の2つのニューラルネットワークを競わせながらAIのデータ学習を進めていく仕組みになっています。
この仕組みからGANは、敵対的生成ネットワークと呼ばれています。
主に、「Generator」が偽物のデータを生成し、「Discriminator」が生成された偽物のデータを本物かどうか判断するというプロセスを繰り返します。
以上のプロセスを繰り返し行うことで、「Discriminator」の精度が向上し、正解のデータを学習し高い精度での画像生成を実現することが可能です。
そのため、GANは従来のAI学習と異なり、教師なし学習という機械学習の手法の1つであるデータのラベル(正解)がない状態での学習が行えます。
DCGANは、そんなGANにCNNを加えて改良されたものなので、分類では同じですが、具体的な仕組みが違います。
DCGAN以外のGANの種類
GANには、DCGAN以外にも主に以下のような種類があります。
- CGAN
- WGAN
- StyleGAN
- CycleGAN
- StarGAN
- BigGAN
以上のGANは、それぞれ特徴や仕組みが異なっているので、しっかりと分けて理解しておくことが大切です。
ここでは、DCGAN以外のGANの種類を主に6つ紹介します。
CGAN
CGANは、「Conditional GAN」という言葉の略称で、条件付きGANとも呼ばれているGANの1種です。
主に、「Generator」と「Discriminator」の2つに追加の条件情報を与えて訓練をするGANになります。
例えば、0〜9の数字を生成するように学習させると、「数字の7を生成」のように生成させたい画像を指定して生成することが可能です。
また、具体的な画像生成を行えるので、GANよりも精度が向上しています。
そのため、指定した条件に合わせて画像生成を行う場合に利用されるGANです。
WGAN
WGANとは、「Wasserstein GAN」という言葉の略称で、Wasserstein距離によって損失計算を導入したGANのことです。
GANには、勾配消失問題や学習が不安定になるなどのデメリットがあるので、効果的に活用していくためには改善させる必要があります。
そこで、学習の安定性を向上させて勾配消失問題を緩和させる目的でWGANが誕生しました。
WGANでは、GANの抱えているデメリットを改善した状態でデータ学習や画像生成を行うことが可能です。
StyleGAN
StyleGANは、本物と区別がつかないほどリアルな画像生成ができるGANの1種です。
主に、段階的に画像の解像度を向上していくことができるので、顔に映るしみやそばかすなどの細かいデータを画像生成に含めることができます。
そのため、本物と見分けがつかないほどリアルな画像を生成できてしまうことから、慎重に扱っていかなければ悪用のリスクも高い技術です。
CycleGAN
CycleGANは、生成された画像を元の画像に再度変換することができます。
生成された画像を元の画像に変換するプロセスで、それぞれの画像がしっかりと一致するように学習していくことで高い精度の画像生成が可能になります。
StarGAN
StarGANは、1つのモデルで複数の変換を学習できることが特徴的なGANのことです。
CycleGANに多クラスも分類を学習させたGANモデルを組み合わせることで誕生したGANの1種であり、現時点では研究・開発が進められている段階です。
そのため、多くの可能性を秘めているGANの1種でもあります。
BigGAN
BigGANは、大規模なデータセットから高い精度での画像生成ができるようにするために誕生したGANのことです。
大規模なデータセットから学習して画像生成を行うことで、高画質の画像生成ができます。
さらに、最大「512×512」サイズという高解像度での画像生成が可能です。
GANは、学習が不安定というデメリットによって高品質な画像出力は難しかったのですが、BigGANではそのデメリットを克服できる手法として注目を集めています。
DCGANのメリット
GANの一種であるDCGANには、主にどのようなメリットがあるのか気になる方も多いです。
ここでは、DCGANのメリットについて解説します。
画像生成の精度が高い
DCGANのメリットは、画像生成の精度が高いことです。
画像生成と画像データの真偽を判断する仕組みを持っているDCGANは、自ら生成した画像を判断することができ、その画像生成の精度も高いです。
さらに、CNNを加えて改良されているので、複雑なデータ処理が行えるだけでなくGANよりも高い精度での画像生成ができます。
そのため、GANよりも将来的に幅広い分野で活用が進んでいくことが予想されます。
DCGANのデメリット
DCGANには、以上のようなメリットだけでなくデメリットも存在しているので、これからDCGANの活用を検討している場合は理解しておきましょう。
ここでは、DCGANのデメリットについて解説します。
大量のデータが必要になる
DCGANでは、高い精度の画像生成を行うためには、大量のデータが必要です。
DCGANは、高い精度での画像生成ができるので幅広い分野で活用が期待されていますが、高い精度での画像生成を実現させるためにはその分大量のデータが必要になります。
十分にデータを収集することができなかった場合は、DCGANであっても十分に精度の高い画像生成を行うことができません。
さらに、大量のデータの収集やそのデータのノイズ除去などの前処理には、多くのコストがかかるので、簡単に実装することが困難です。
そのため、DCGANの活用を検討している場合は、以上のようなデメリットも理解しておきましょう。
DCGANの活用方法
DCGANは、高い精度での画像生成ができることから画像生成の分野で活用されていることが多いです。
また、画像生成の分野でも特に以下のような場面で活用されています。
- 顔認証
- AIカメラ
ここでは、DCGANの活用方法について解説します。
顔認証
DCGANは、顔認証に活用することが可能です。
顔認証では、さまざまな人間の顔のデータを収集して双子などの似ている人物同士でも然りと識別する必要があります。
そのため、高い精度での画像認識が必要であり、簡単に実装できる技術ではありません。
DCGANでは、そんな顔認証でも細かいデータから正確に認識することができるので、セキュリティシステムなどで活用が期待されています。
ただ、導入直後では学習データが少なく精度が低いということも理解しておきましょう。
AIカメラ
AIが搭載されたカメラにもDCGANは、活用できます。
例えば、工場や人間が立ち入ることが危険な場所でのカメラ撮影を行う場合、DCGANを活用したカメラを活用すれば実際に確認しなくても高い精度で識別・認識が可能です。
さらに、収集されたデータとDCGANが生成したデータを活用することで、少ないデータから大量のサンプルデータを生成することができます。
そのため、少量のデータから効率的に高い精度でのAI認証を行うことができ、コスト削減や安全対策にも貢献します。
まとめ
DCGANは、現在でも研究が進められており今後さらに高い精度での画像生成が実現していくことでしょう。
ただ、DCGANの効果を十分に発揮させるためには、大量のデータを学習させていく必要があるので、現時点では気軽に活用できないシーンも多いです。
そのため、DCGANの今後の動向に期待しておきましょう。
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