マルチモーダルAIとは?特徴や仕組み、身近な事例やシングルモーダルAIとの違いまで徹底解説!
INDEX
AIの研究・開発は急速に進められており、日々さまざまな活用ができる技術が誕生しています。
その中でも、特に注目を集めているものに複数の種類のデータ処理ができ、自動運転技術などにも活用されている「マルチモーダルAI」があります。
今回は、マルチモーダルAIの特徴や仕組み、身近な事例やシングルモータルAIとの違いまで徹底解説します。
マルチモーダルAIとは?
マルチモーダルAIとは、テキストや画像、音声や動画などの複数種類のデータを1度に処理できるAI技術のことです。
さまざまなデータ処理を1度に行うことができるので、一般的なAIでは処理できないようなデータでも処理できます。
そのため、人間に近い判断が行えるAIとして近年高い注目を集めており、さまざまな技術へ活用されています。
マルチモーダルAIの歴史
マルチモーダルAIは、1986年頃に研究が始まりました。
当時は、機械学習が注目を集めていた時期でもあり、マルチモーダルAIの研究もその一環として行われていました。
主な研究内容は、音声と唇の動きの画像を組み合わせて内容を読みとるものです。
2000年以降にはディープラーニングが登場したことで、ディープラーニングを用いたマルチモーダルAIの研究が進み、更なる発展を遂げました。
2013年にはmテキストと表情を認識する組み合わせたデータを処理できるAIの研究が進み、現在までに、より人間に近いAIが誕生し続けています。
ディープラーニング
ディープラーニングとは、機械学習の手法の1つで、多層の中間層を持つニューラルネットワークを活用した手法のことです。
ニューラルネットワークは、入力層・中間層・出力層の3層から構成されていますが、ディープラーニングはそのうちの中間層が多層構造になっています。
そのため、従来の機械学習よりも精度の高いデータ分析や結果の出力が可能で、複雑なデータの構造やパターンも学習できます。
そのため、マルチモーダルAIの研究・開発には、欠かせない技術の1つです。
マルチモーダルAIの仕組み
マルチモーダルAIは、さまざまな種類のデータを1度に処理することができる、人間の思考に近いAIです。
人間が五感を使って複雑な思考を行うように、マルチモーダルAIもさまざまなデータから高度な結果や判断を行えます。
これは、複雑なデータを高い精度で分析・学習できるディープラーニングによって実現している仕組みです。
そのため、従来のAIでは不可能だった複雑なデータを処理ができ、自動運転などのさまざまなデータを処理する必要のある技術に活用することが可能です。
マルチモーダルAIを活用したサービス
マルチモーダルAIを活用して開発されたAIサービスは数多く存在しますが、その中でも代表的なものには、以下の3つがあります。
- GPT-4
- Gen-2 by Runway
- Gemini
ここでは、マルチモーダルAIを活用したサービスを主に3つ紹介します。
GPT-4
GPT-4は、OpenAIが2023年3月に開発したマルチモーダルAIを搭載したAIサービスのことです。
過去にOpenAIが開発した「ChatGPT」の上位モデルであり、25000語以上のテキストを同時に読み取ることができます。
さらに、画像とテキストの2種類のデータを入力することで、その2種類のデータを処理して画像の説明文を生成できます。
GPT-4は日本語でも利用することができ、日本語への翻訳機能も搭載されているので、気になる方は利用してみることをおすすめします。
Gen-2 by Runway
Gen-2 by Runwayは、Runwayが開発したマルチモーダルAIサービスのことです。
テキストや画像、動画データから新たな動画を生成することができ、最大16秒までの動画であればブラウザ上で誰でも気軽に生成させられます。
ハイスペックなPCを用意することなく、ブラウザ上で利用できるAIサービスなので、気軽に動画作成がしたい方にはおすすめです。
ただ、入力するテキストには英語が必要になります。
Gemini
Geminiは、2023年12月にGoogle DeepMindが開発したマルチモーダルAI搭載のサービスです。
主に、テキストや画像、動画や音声などのデータ処理からさまざまなプログラミング言語を使ったコード生成などが行えます。
現在は、「Google Bard」と「Pixel 8」の2つのサービスを統合することで利用できるサービスですが、今後はGoogleサービスに組み込まれていく予定です。
マルチモーダルAIとシングルモーダルAIとの違い
シングルモーダルAIとは、1種類のデータのみしか処理することのできないAIのことです。
例えば、テキストデータの処理を行うシングルモーダルAIであれば、動画データや画像データなどの処理を行うことができません。
マルチモーダルでは、テキストデータ・動画データ・画像データなどのデータを全て1度に処理できます。
マルチモーダルAIは複数種類のデータを1度に処理できるAIで、シングルモーダルAIは1度に処理できるデータは1種類までという違いがあります。
マルチモーダルAIの課題
マルチモーダルAIは複数種類のデータを1度に処理するので、データ量が増加し計算コストも高くなってしまいます。
そのため、マルチモーダルAIの研究・開発では、効率的にデータ処理を行うための計算基盤を用意する必要があります。
また、さまざまなデータを認識して解釈する必要があるので、ブラックボックス化のリスクも考えられます。
これからマルチモーダルAIを活用していくためには、以上のような課題を解決させていくことが重要です。
マルチモーダルAIの身近な活用事例
マルチモーダルAIは、さまざまな分野で活用が進んでおり、日常生活の身近な場面でも活用されています。
ここでは、マルチモーダルAIの身近な活用事例を主に6つ紹介します。
画像とテキストを組み合わせた生成AI
OpenAIが開発した「GPT-4」には、マルチモーダルAIを活用して画像とテキストを組み合わせた生成AIが搭載されています。
画像データとテキストデータの2種類のデータを入力することで、GPT-4の生成AIが画像とその説明文を自動で生成することが可能です。
これまで、画像データの分析とテキストデータの分析は、別々で行われていましたが、マルチモーダルAIによって同時に行えるようになりました。
自動運転技術
自動運転技術も、マルチモーダルAIの活用事例の1つです。
自動運転技術を開発するためには、運転中に認識する必要のある周囲の車や人、障害物や信号、標識などがあります。
以上の情報を瞬時に認知して分析・判断するためには、複数種類のデータを1度に分析できるマルチモーダルAIが必要不可欠です。
実際に、日本にある自動運転技術を開発している「Turing株式会社」では、マルチモーダルAIを搭載した自動運転車が開発されました。
防犯カメラ
マルチモーダルAIを搭載して高精度でデータを処理できる防犯カメラも誕生しています。
株式会社NTTデータでは、敷地内での迷惑行為やセイキュリティ対策に有効なマルチモーダルAI搭載の防犯カメラの開発を進めている状況です。
これまでの防犯カメラよりも高い精度で周囲の状況判断や行動認識を実現することで、犯罪やトラブルの未然防止に貢献します。
さらに、監視体制の強化や監視業務の効率化によるセキュリティ対策の充実を期待することもできます。
異常検知
工場で生産された設備や製品の異常を検知するための機器にも、マルチモーダルAIは活用されています。
マルチモーダルAIを搭載した機器を活用することで、温度や形状、振動などを画像や映像、音声などの複数種類のデータから分析して検知することが可能です。
そのため、設備のメンテナンス作業の精度向上や時間短縮、従業員の安全確保や品質向上などさまざまな効果を期待できるようになります。
動画サイトの監視
現在、YouTubeをはじめとしたさまざまな動画サイトが登場しています。
その中には、マルチモーダルAIを活用してユーザーが投稿した動画内容を確認している動画サイトも存在します。
マルチモーダルAIが、投稿された動画の映像や音声を分析することで、ガイドラインに沿っているかどうか、不適切な内容でないか、などを判断しています。
医療ビッグデータの解析
医療業界では、日々AI活用が進んでおり、マルチモーダルAIを活用した研究も進められています。
マルチモーダルAIを活用することで、膨大な医療ビッグデータを解析して病気や怪我の状態や経過、治療法などを判断し、AIによる診断精度を向上させます。
さらに、医療費の削減や医療従事者の負担軽減、病気や怪我の早期発見にも貢献できるとして、注目されています。
そのため、将来的には画像診断や電子カルテの作成で、マルチモーダルAIが活用されることが一般的になっていくことでしょう。
マルチモーダルAIの今後の展望
マルチモーダルAIは、現在さまざまな分野での活用が進んでいるので、今後もより多くの分野で活用されていくことが期待されています。
さらに、現時点でもさまざまなAIサービスに搭載されており、日常生活の中で気軽に利用できるようになっています。
そのため、今後は医療業界や製造業、コンサルティングや娯楽など、これまで以上に幅広い分野でマルチモーダルAIによる技術が誕生していくことでしょう。
まとめ
マルチモーダルAIの登場によって、AIはより人間らしいデータ処理や判断を行えるようになりました。
さらに、「GPT-4」「Gen-2 by Runway」のようなマルチモーダルAIを搭載したAIサービスの開発も進められており、ビジネス活用も急速に進んでいる状況です。
そのため、今後もさまざまな分野での活用が期待されているマルチモーダルAIの動向に注目しておきましょう。
さらに、今注目を集める生成AIリスキリングの第一歩を。生成AIパスポートとは?
生成AIパスポートは、一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)が提供する、AI初心者のために誕生した、生成AIリスクを予防する資格試験です。AIを活用したコンテンツ生成の具体的な方法や事例に加え、企業のコンプライアンスに関わる個人情報保護、著作権侵害、商用利用可否といった注意点などを学ぶことができます。
⽣成AIの台頭により、AIはエンジニアやデータサイエンティストといった技術職の方々だけではなく誰もがAIを使えるようになりました。今、私たちがインターネットを当たり前に活用していることと同様に、誰もが生成AIを当たり前に活用する未来が訪れるでしょう。
そのような社会では、採用や取引の場面で、生成AIを安全に活用できる企業・人材であることが選ばれる前提条件になり「生成AIレベルの証明」が求められることが予測できます。生成AIパスポート試験に合格すると、合格証書が発行されるため、自身が生成AIを安全に活用するためのリテラシーを有する人材であることを、客観的な評価として可視化することが可能です。
ぜひあなたも生成AIレベルを証明し「生成AI人材」に仲間入りしましょう!