自然言語処理(NLP)とは?概要・仕組み・身近な活用事例を解説
INDEX
「ChatGPT」や「Perplexity AI」などのAIチャット機能を使う方が増えていますが、これらの技術に必要なのが自然言語処理です。
自然言語処理といっても、どういうものなのか、仕組みがどうなっているのかわからない方も多いでしょう。
そこでこの記事では、自然言語処理の概要・仕組み・身近な活用事例を解説していきます。
自然言語処理とは
自然言語処理とは、私たちが日頃使っている会話や文章をコンピューターで処理する技術のことです。
自然言語には、プログラミング言語やマークアップ言語などの人工言語は含まれません。
普段コミュニケーションとして使用するような言葉を、AIに学習させたり分析させたりしています。
しかし、私たちが使うコミュニケーションには、ニュアンスの曖昧さや意味の重複があるため完全に処理することは今のところできません。
例えば「人気がない」は「にんきがない」と読めますが、「ひとけがない」とも読めます。意味もそれぞれ「あまり好まれない」「人の居る気配がしないさま」と異なります。
このように、同じ字でも読み方によって意味が異なるものは、コンピューターの処理では正確に処理しきれません。
そのため、自然言語処理はまだまだ研究の余地があるAI分野といえます。
自然言語処理の仕組み
自然言語処理の仕組みは以下の5つの手順で行われますが、後半にいくにつれて処理が難しくなっていきます。
機械可読辞書とコーパス
機械可読辞書とコーパスは処理をするために事前準備に必要な手順です。まず機械可読辞書とは、私たちが使用する辞書と同じものではありません。
コンピューターが語彙を理解するための辞書のことです。書籍や文献の情報を読み取れるように変換しています。これは図書館やレンタル店などの検索システムとして利用されてきました。
続いてコーパスは書籍や文献などの情報だけでなく、話し言葉を文字に書き起こしたデータを大量に集めたデータベースのことをいいます。
書籍などの書き言葉だけでは、例文が少なかったり実用性がなかったりと情報としては足りません。そのため書籍などの情報に加え、多種多様な話し言葉を構造化します。構造化ができると、品詞や統語構造など情報にラベリングをするまでがコーパスです。
形態素解析
まず、形態素とは意味を持つ言葉の最小の単位のことです。例えば、「川魚」は「川」と「魚」に分けられますが、この単語1つ1つに分けていくことが形態素解析です。
この作業がなければ、形態素の意味をデータとして処理できません。このままでは、AIに言葉を学習させるときに曖昧になってしまいます。
正確な言葉の情報をAIツールに組み込むためには、形態素解析が欠かせません。この解析には、「MeCab」や「ChaSen」といった形態素解析エンジンを使用します。
構文解析
構文解析は、形態素解析によって分けられた単語同士の関係性を解析します。この解析をしなければ、文脈を判断できません。
構文解析には依存構造解析と句構造解析の2つの方法があります。依存関係である修飾・被修飾・係り受け関係をもとに、文章の構造を表現したものが依存構造です。
この構造がわかっていても、形態素解析によって分けられた文章のどこに係り受け関係があるのかを調べなければなりません。
この依存性を調べるのが、依存構造解析です。一方、句構造とは文中の句・節や文そのもののまとまりのことをいいます。
句構造解析はこのまとまりを抽出する技術で自然言語処理ができた初期から研修が続いており、自然言語処理研究課題の中心といえるでしょう。
意味解析
言葉は同じ文字でも区切る位置や読み方の違いで意味が大きく異なります。
構文解析まで行われた文章の本来の意味を、辞書と照らし合わせて正しい意味になるよう解析していくのが意味解析です。
特に日本語は1つの単語で複数の意味があるので、単語だけだとどの意味で使用しているのかがわかりません。
そのため、文章内での単語のつながりから意味を抽出します。このことから、意味解析は非常に高度な処理だといえるでしょう。
文脈解析
文脈解析は形態素解析・構文解析・意味解析で解析された文を使用して、他の文との関係性を解析することです。
1文だけでは同じ意味でも、他の文との関係性によっては意味が異なってしまうこともあります。しかし、言葉の意味や構造だけではこの解析はできません。
文脈の関係性を正しく解釈するためには、文章の背景など様々な「知識」が必要不可欠です。この知識を得るために「機械学習」や「ニューラルネットワーク」も使用されます。
しかし、文脈解析はかなり高度な処理なので、未だに実用的な文脈解析システムは構築できていません。
照応解析や談話解析といった日本語に欠かせない解析方法の研究も進められているので、実用性のある文脈解析が発展していくことになるでしょう。
自然言語処理に用いられる手法
自然言語処理に用いられる手法は、コンテンツ評価を上げたり商品の品質改善のために欠かせません。
ここでは、「共起語解析」「トピックモデル」「感情分析」について解説します。
共起語解析
共起語はあるキーワードに対しての関連度が高い単語のことです。
共起語解析とは、調査した単語を理解しコンテンツに反映させる方法ですが、文章に特定のキーワードが多ければいいというわけではありません。
特定のキーワードが多ければ検索上位に反映されますが、多すぎるとペナルティの対象になってしまうのです。
検索上位に反映するためにはコンテンツに対して評価の良い単語があります。この良い評価を得られる単語を共起語解析で抽出し、ユーザーが読みやすいコンテンツを作成しましょう。
共起語はサジェストワードや関連ワードと同じようなものと思っている方が多いです。
サジェストワードはあるキーワードを検索するときに、一緒に検索される単語のことです。
そのため、単語自体に関連性はありません。関連ワードとはユーザー側が、あるキーワードに対して連想する単語のことをいいます。
トピックモデル
トピックモデルはコンテンツの主題が何かを把握するために行う自然言語処理の手法です。いくつもの文章データを学習させ、どの単語が何回使用されているのかを抽出します。
例えば、「選手」「バスケットボール」「授業」「先生」という単語があったとしましょう。これを学習させ処理すると、「スポーツ」「学校」という2つのトピックに分類されます。
この自然言語処理の手法により、トピックにどの単語がどれくらい出てくるのかを確率分布的に抽出し自動でタグ付けができるようになります。
感情分析
文章にも感情が存在しますが、この感情をポジティブ・ネガティブ・ニュートラルに分類するのが感情分析です。
例えばSNSやECショップのレビュー、評価サイトなどには「楽しい」「美味しかった」「もう行きたくない」「つまらない」といった意見があります。
このような感情は企業の商品作りに欠かせません。肯定的な意見はポジティブに分類し、否定的な意見はネガティブに分類されます。
それ以外の感情はニュートラルと判断されるでしょう。これらの感情を分析し数値化することで、リニューアルや新商品などマーケティング活動に活かされます。
感情分析は一般ユーザー向けというより、企業の品質改善のために役立つでしょう。
自然言語処理の身近な活用事例
自然言語処理という言葉は知らなくても、多くの方が知らぬ間に触れています。ここからは、自然言語処理の身近な活用事例を見ていきましょう。
音声認識AI
音声認識AIはSiriなどの音声アシスタントや対話型ロボットなどに活用されています。音声認識は音声データをテキストに変換するシステムです。
しかし、これだけだとテキストに起こすだけで漢字にしたりコミュニケーションを構築したりすることはできません。
そこで、自然言語処理で言葉の意味を正確に理解させることで、音声入力機能による対話などができるようになります。
このシステムは議事録の作成や文字起こし、スマートスピーカーなどに活用されているのです。ただ、音声認識の精度は十分ではありません。
活舌やノイズなどで誤認識することが多いため、音声認識の精度向上をしていかないと、さらなる普及は難しいでしょう。
翻訳機能
昨今ではDeepL翻訳のように、微妙なニュアンスも正確に翻訳できる機械翻訳が登場しています。この機械翻訳に使用されているのが自然言語処理です。
従来の自動翻訳は辞書に載っている意味での翻訳が当たり前で、言葉のニュアンスを読み取ることはできませんでした。
また、微妙なニュアンスを翻訳するためには翻訳家に依頼するため、出来上がるまでに時間がかかっていました。
しかし、自然言語処理の発達によって数秒で翻訳できるようになったため、外国人観光客向けの対話ロボットなどが活躍しています。
検索エンジン
自然言語処理が活用されているもので、多くの方が利用するのが検索エンジンです。
ハッキリとした言葉はわからないけどこんな感じという感覚で検索する方もいるでしょう。自然言語処理によって、曖昧な言葉でも求めている内容が出てきます。
これにより、検索できる幅が広がりました。
テキストマイニング
テキストマイニングとは膨大な量の文章データから、有益な情報だけをピックアップすることです。
これにより、顧客が求めていることを分析することが可能になりました。コールセンターなどでオペレーターが入力しているのは企業に向けた簡単な要望程度です。そのため、顧客の気持ちや求める像を解決できませんでした。
しかし、自然言語処理によるテキストマイニングにより、求められているものを分析することで顧客ニーズに応えたり顧客から答えを得たりができます。
まとめ
自然言語処理は言葉を知らないだけで、ネット社会の様々な場所で使用されています。
テキストだけでなく会話などの音声でも文字に起こせるため、観光客向けの対話ロボットやコミュニケーションを取る手段として活用できます。
しかし、自然言語処理はまだまだ研究の余地がある分野なので、今後さらなる発展が期待できるでしょう。
さらに、今注目を集める生成AIリスキリングの第一歩を。生成AIパスポートとは?
生成AIパスポートは、一般社団法人生成AI活用普及協会(GUGA)が提供する、AI初心者のために誕生した、生成AIリスクを予防する資格試験です。AIを活用したコンテンツ生成の具体的な方法や事例に加え、企業のコンプライアンスに関わる個人情報保護、著作権侵害、商用利用可否といった注意点などを学ぶことができます。
⽣成AIの台頭により、AIはエンジニアやデータサイエンティストといった技術職の方々だけではなく誰もがAIを使えるようになりました。今、私たちがインターネットを当たり前に活用していることと同様に、誰もが生成AIを当たり前に活用する未来が訪れるでしょう。
そのような社会では、採用や取引の場面で、生成AIを安全に活用できる企業・人材であることが選ばれる前提条件になり「生成AIレベルの証明」が求められることが予測できます。生成AIパスポート試験に合格すると、合格証書が発行されるため、自身が生成AIを安全に活用するためのリテラシーを有する人材であることを、客観的な評価として可視化することが可能です。
ぜひあなたも生成AIレベルを証明し「生成AI人材」に仲間入りしましょう!