【6選】企業の相談事例から学ぶ、LLMのビジネス活用トレンド
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2023年以降、多くの企業が生成AIの導入を検討する中で、AI導入支援を手がけるコンサルティング企業への相談が急増しています。実際に生成AIのビジネス活用を検討している企業では、他社がどのような相談を行っているのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、AI導入支援コンシェルジュサービス「AI Market」に寄せられた相談事例をもとに、どのような企業が、どういった生成AI導入の検討を進めているかをご紹介します。
今回は、ChatGPTやClaudeに代表される言語処理を得意とするLLM(大規模言語モデル)の導入相談に関するトレンドについて取り上げます。
技術承継
まずは、「技術承継」に関する活用事例です。
特に製造業の企業様からは、熟練工が持つ経験則やノウハウを、ビッグデータやLLMを活用して可視化する取り組みを行いたい、というご相談が増えています。
例えば、長年培った熟練工の目利きや感覚的な判断を言語化し、生成AIを活用して、体系立てられた知識として活用することで、新人教育の質を向上させたり、引退時の技術損失を最小限に抑えたりすることが可能になります。
これにより、企業の生産性や品質管理レベルの安定化、さらには技術力の底上げにもつながるため、製造業に限らず、幅広い業種でニーズの多い相談となっています。
この際、熟練工の方の知識を言語化することが難しい、という場合があります。こういった際には、AIを活用した議事録サービスを用いて、熟練工の方にインタビューを行い、インタビュー内容を文字起こし・要約することで知識を引き出す、という方法もあります。
営業強化
営業担当のスキル向上や商談の効率化を目的として、LLMを活用したさまざまな手法が注目されています。
例えば、AIアバターを使った営業ロールプレイングや営業スキルに依存しない最適な提案などのLLM活用の相談が増えています。
1つ目の営業ロールプレイングでは、その業界の知識などを学習させた仮想顧客として動くAIアバターとロールプレイングを行うことで、実際の商談に近いシミュレーションが可能です。(音声認識、音声合成を活用するケースのほか、チャットベースで行うこともあります。)
AIアバターは、ロールプレイング中に発せられたキーワードや営業トークを評価し、改善点をフィードバックします。
これを通して、新人教育をより効率的かつ高品質で行うことができるようになります。
これを応用した特殊なケースとしては、医師の研修(顧客ではなく模擬患者をAIアバター化)における活用のご相談などもあります。
2つ目の営業スキルに依存しない最適な提案では、多種多様な商材を扱う商社から多く寄せられています。
例えば、商談の会話をリアルタイムで音声認識し、顧客が求めているキーワードや関心のある業務課題を分析して、複数商材の中から最適な商品やプランを提案してくれる、というものです。(リアルタイムではなく、商談後に活用する形も)
バックエンドで生成AIが情報を整理し、適宜タブレットや画面などに推奨の提案内容を提示するため、新人営業社員のようなすべての商材を把握しきれていない営業担当でも、顧客満足度の向上、クロージング率の向上が期待できる取り組みです。
問い合わせ対応の自動化チャットボット
これまでもチャットボットを使った問い合わせ対応は多くの企業で導入されてきましたが、LLMを組み合わせることで、より精度の高い回答が可能になっています。
例えば、エアコンなどの製品を製造販売されている企業様からは、社内の製品マニュアルやよくある質問(FAQ)データなどをLLMに参照させることで、お客様からの問い合わせを極力自動化したい、というご相談をいただきました。
RAG(Retrieval Augmented Generation:検索拡張生成)を用いて回答を行うことで、お客様からの曖昧な問い合わせに対しても、膨大な製品マニュアルの中から関連する情報をより的確に提示できるようになります。
また、LLMによって言語処理能力が向上しているため、問い合わせ内容が複雑であっても、ユーザーとの対話の中で追加情報を引き出しながら最適解に導く仕組みを実装することが可能です。
その結果、カスタマーサポートの負担軽減だけでなく、24時間365日対応や多言語サポートなど、サービスの品質と利便性を高めることが可能になっています。
他にも、旅行業の企業様の場合は、予約を行ったお客様から旅程などに関する質問も多く、旅程に関する情報や、基本的なFAQ(キャンセル方法など)をLLMに読み込ませることで、ご予約いただいたお客様からのお問い合わせ対応にかかる業務工数を削減したいというご相談もあります。
社内ドキュメントの検索
業界を問わず、よくご相談いただくのが「社内ドキュメントの検索」での生成AI活用です。
「どのような情報がどこにあるのかわからない」「経費申請のフローが部署ごとに異なっていて混乱する」といった社内の声は、多くの企業で共通する課題です。
特に、製造業や不動産業など大量のドキュメントを扱う企業様からのご相談が多い傾向にあります。
そこで、生成AIを活用したドキュメント検索機能を導入することで、従業員は自然言語で質問を投げかけるだけで、関連性の高い社内資料や手続き方法を即座に取得できます。
例えば、「出張費の精算方法を知りたい」と質問すると、関連する規定、必要書類、手続きフローなどをまとめて提示するような仕組みが実装されます。(エンタープライズサーチとも呼ばれます)
「この資料に書いてあります」という回答ではなく、資料をエビデンスとして提示しながら、「こうやって申請します」といった形で、実際の回答を行えるようにする、というところがポイントです。
効率的な情報アクセスが可能になることで、従業員の生産性は飛躍的に向上し、社内コミュニケーションの円滑化にも寄与します。
VoC分析
VoC(Voice of Customer=顧客の声)の適切な分析・把握は、製品・サービスの改善や新規開発に欠かせません。
こちらは、製造業や小売業の企業様からご相談が多い内容です。
従来はテキストマイニングや数値データを用いた分析が主でしたが、自然言語処理能力の高い生成AIの登場により、大量の顧客フィードバックを短時間で集約・要約し、さらに感情面や意図をより深く推定できるようになりました。
具体的には、各チャネル(アンケート、コールセンター、SNSなど)で集まった顧客の声をLLMに取り込み、顧客満足度や改善点をトピックごとに可視化・整理するといった活用が進んでいます。
これによって、経営・マーケティング部門だけでなく、開発部門など現場レベルでも顧客ニーズに迅速に対応しやすくなり、PDCAサイクルを加速させる効果が期待できます。
社内アンケートの分析と組織最適化
最後に、多くの従業員を抱えるコンサルティング会社様から、社内アンケートの分析についてご相談を頂いた事例です。
従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイなどの社内アンケートは、人事施策や組織改革の重要な材料です。
しかし、大量の自由記述コメントや多岐にわたる回答項目の分析には、相応の労力と時間がかかります。
そこで、LLMを用いて、アンケート結果を自動で要約・分類・可視化し、社員のモチベーションや不満点、改善要望などを高速に抽出したい、というものです。
また、LLMだけでなく、データ分析AIと組み合わせることで、どのような社員をどの組織に配属するのが適切か、といったことも合わせて分析して、組織戦略を最適化していくという取り組みも可能です。
まとめ
生成AIは企業のあらゆる業務領域で導入の検討が進められており、実際の活用も多く始まっています。
各社の導入事例が増えるにつれ、費用対効果や運用面のノウハウも蓄積されていくため、早めに活用方法を検討しておくことで、大きな競争優位を得られる可能性があります。
今後も、技術進歩とともに活用領域は広がっていくと想定されますので、ぜひ参考にしてみてください。
Writer:AI Market
Reference:AI Market LLM解説記事
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