【生成AI×セールス】生成AI時代の営業マンに「仮説構築力」が求められるワケ

INTERVIEW 004
UKYO OGASAWARA
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

INDEX

生成AIを営業領域で使いこなしていくためには何が必要なのか。成約確度の高い企業へのアプローチを可能にするセールスオートメーションツール「Sales Marker(セールスマーカー)」を提供し、新時代の営業手法「インテントセールス」を掲げるCrossBorder株式会社 代表取締役CEOの小笠原 羽恭氏にお話を伺いました。小笠原氏は、生成AIを営業業務に導入する場合、「個人単位ではなく、組織単位で導入するのが望ましい」と語ります。その理由や、生成AI時代の営業マンに必要なスキルセットについて解説していただきます。

これまでの営業課題の解決へ。生成AI×セールスに注目する2つの理由

ー営業領域における生成AI活用という視点で、注目しているポイントを教えてください。

1つは「非構造データから構造データへの変換」です。営業領域では、構造データと非構造データの2種類のデータが存在します。構造データはCRMやSFAのようなシステムに格納されるテーブル型のデータで、これを使ってインサイトを得たり商談の分析を行ったりします。一方で非構造データ、例えばWeb上の情報を基にターゲット企業を選定する工程は難易度が高く、多くの企業が正確なデータ分析をできないままターゲティングを行っていました。これによって、データの鮮度や精度が落ちるという課題が生まれていたんです。しかし、生成AI、特にChatGPTを利用することで、非構造データから構造データへの変換が可能となり、これまでの技術的な課題を克服できるようになった点に注目しています。

もう1つは「営業の標準化」です。最近のテーマとして、組織の営業力の標準化を目指す「セールスイネーブルメント」が注目されています。これまで、トップ営業マンのノウハウを他の営業マンに浸透させることに時間がかかるという課題がありました。この課題に対し、営業マンのターゲティングやトークの仕方などを生成AIに学習させることで標準化し、ノウハウの浸透を迅速化することができるのではないかと考えています。

生成AIは組織単位で導入せよ。実現すべき「共通化」と「標準化」

ー企業が営業領域で生成AIを導入する場合、どのような進め方が望ましいのでしょうか?

個人単位ではなく、組織単位での導入が重要だと考えていて、理由は2つあります。1つは「共通化」を実現するためです。多くの企業では、担当者ごとに同じ業務をバラバラでやっているケースが少なくありません。私自身がコンサルティングファームで大手企業の業務フローを整理した際にも、多くの業務が重複しているのを確認した経験があります。生成AIの活用を組み込んだ一定の業務フローを確立すれば、同じ業務を複数の人が繰り返し行う必要がなくなります。このような共通化を推進するためには、組織全体での導入が効果的だと思います。

2つ目は「標準化」を実現するためです。各企業において、営業マンが最低限習得すべきトークスキルやターゲティングの精度など、一定の基準が存在すると思います。先ほど述べた内容とも重複しますが、生成AIの活用はこの基準を標準化することに役立ちます。生成AIにより多くのデータを学習させ、より多くの営業マンの基準を底上げするためにも、組織単位での導入が効果的だと考えています。

生成AI時代の営業マンに必要なスキルは「仮説構築力」

ー企業の生成AI導入が進んだ場合、営業マン個人の差別化という観点では、どのようなスキルが求められるのでしょうか?

「仮説構築力」がカギになると考えています。企業との商談時に、ある程度の仮説を構築した上で提案を進めることが成功への要因になる、ということです。仮説を立てる過程では、多くのデータを取得し、詳細なリサーチが必要です。Web上でこうした工程を実施する場合、時間がかかることが多く、これまでは十分な時間がないと、質の高い仮説を構築するのが難しい場面もありました。

しかし、これからは生成AIを活用することで、様々なデータソースからの情報を迅速にピックアップし、適切なプロンプトによって整理された情報を収集できます。何時間もかかっていたリサーチを短時間で効率的に行うことができるわけです。この情報をもとに、精度の高い仮説を構築する能力が、生成AI時代の営業マンには求められると考えています。

また、営業マン個人のスキル向上による成功事例が、先に述べた標準化につながり、組織全体に還元されるような「ボトムアップ型」のサイクルを生み出すことができるのではないかと思っています。

ー最後に、生成AI活用を検討している営業マンの方へ、メッセージをお願いします。

まずは最初の一歩として、実際に試して使ってみることが大切です。多くの人が試した結果を見るのではなく、自分自身で使う経験が不可欠だと思います。一般的な情報は、特定の条件や使い方で得られた結果に偏っていることもあるため、自分の目で確かめることが重要です。

例えば、生成AIに対して、世間に広まっていない情報に関して質問をして、間違った答えが返ってきたときに、「生成AIはウソをつく」と捉える方がいます。しかし、必ずしもウソをついているとは限りません。一定以上の必要な情報のインプットがされていない質問であるがゆえに、必要な答えがアウトプットされていないだけだったりするわけです。

生成AIは適切な使い方を身につけることで、より正確な結果を得ることができます。自分で使ってみて、自分の感覚で見極めながら、適切な使い方を発見していくことが最善の方法だと思います。

PROFILE

UKYO OGASAWARA

一般社団法人生成AI活用普及協会 協議員/CrossBorder株式会社 代表取締役CEO
CrossBorder株式会社CEO。新時代の営業手法インテントセールスを実現する「Sales Marker」を提供し、1年半で200社に導入しシリーズA達成。生成AIを活用したセールスイネーブルメントを実現。経歴:野村総合研究所:先端技術R&D・新規事業に従事。ベイカレント・コンサルティング:戦略立案やAIを活用したDXプロジェクトを推進。Forbes Under 30 Asia List選出。