量子コンピュータってなんだ? 掛け算で広がる生成AIのさらなる可能性

INTERVIEW 012
DAISUKE MOTOKI
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生成AIの普及が進む中、注目を集めている量子コンピュータとは一体何なのか。生成AIと量子コンピュータ技術を活用したビジネス統合支援プラットフォーム「CalqWorks」を運営する株式会社KandaQuantum 代表取締役の元木 大介氏にお話を伺いました。量子コンピュータを活用するメリットとして、元木氏は「ChatGPTが搭載している生成AIは1対1の対話が主。これが数十、数百、数千、数万人の規模まで対応できるようになる」と語ります。生成AIがもたらす価値と、量子コンピュータ技術が掛け合わさることによって広がる可能性について迫ります。

生成AIの対応規模を数万倍に!? 量子コンピュータ技術が私たちにもたらすメリット

ー量子コンピュータ技術は聞き慣れない言葉ですが、活用によってどのようなメリットが生まれるのでしょうか?

これまでよりも大規模かつ高速、高精度化が進み、様々なビジネス課題を解くことができます。例えば、ChatGPTが搭載している生成AIは1対1の対話が主です。これが数十、数百、数千、数万人の規模になると、これら全てをコントールするような基幹システムの役割を果たすAIは膨大な情報を解く必要があります。それを解くために活躍するのが量子コンピュータです。量子コンピュータは特定の問題であれば、スーパーコンピュータの数億倍の速度で解けるケースもあります。こうしたAIを提供するサービスとして、今後は量子コンピュータが活用されていく可能性があるんです。

空飛ぶクルマにも使われる!? 量子コンピュータ技術の活用例

ー量子コンピュータ技術の活用によって、ビジネスシーンではどのような変化がもたらされますか?

まず働き方が大きく変わります。例えば、あるプロジェクトが立ち上がったとします。プロジェクトマネージャーは多くの管理スケジュールを組み立てながら各方面に指示を出していかなければいけないので、工数も多いし、考えることもたくさんあります。これらの業務を、生成AIが補助的にサポートしてくれる時代がやってきます。

クライアントから数ヶ月後に納期を指定され、プロジェクトマネージャーは社内で十数人ものメンバーをアサインして、タスクを振り分けるガントチャートを作るケースがあると思います。この作業はものすごく大変ですが、量子コンピュータを使えばたった数分で、数ヶ月分のスケジュールをたたき台として作ってくれるんです。これは弊社が研究・開発したシステムで、実証実験として公開しています。

ー生活に近いところでも、量子コンピュータ技術は活用されるのでしょうか?

空を飛ぶクルマに関しては実用化に向けて開発がかなり進んでいると言われていますが、安全面に関してはまだ議論が進んでいません。空の上で車同士がぶつかったら大変なことになるし、とても人間が運転できるものではないですよね。だからこそAIで制御する必要がありますが、リアルタイムで大量の情報をさばくために量子コンピュータ技術が必要になってくるでしょう。

生成AIの価値は、ユーザーだけでなく作り手側にも

ー最先端の技術を扱われている元木さんからみて、生成AIの価値はどこにあると思われますか?

生成AIはアウトプット重視なので、ユーザーからは「体験型AI」という認識が生まれていると思います。ChatGPTはまさに体験型AIと言ってもいいでしょう。対話をすることによって、人間と話しているかのようにアウトプットをしてくれる。使いこなすことでPDCAをものすごい早さで回すことができる。これも生成AIの価値の一つだと思います。

ビジネスの場だと、文章やレポート、資料も生成AIが作ってくれます。AIに指示をしてたたき台を作ってもらい、対話しながら修正していくこともできるようになっていきます。この例はユーザーの文脈ですが、プロダクトを作る側の体験も変わってきています。

ーどのように変わっているのでしょう?

例えば、プログラミングコードは英語の羅列が並んでいて、書き込む画面も黒い。専門外の人にはよく分からないですよね。でも、最近の生成AIだと日本語で「●●を作りたい」「▲▲をしてほしい」と指示すると、英語でプログラミングをしてくれるんです。「プロンプトエンジニアリング」という領域で、今まで人間が日本語でまとめていた仕様書をAIに渡すと、プログラミングが完成するんです。自分でコードを書かなくてよくなる、という意味でエンジニア側の体験も変わりつつありますね。

ー今後、量子コンピュータ技術を掛け合わせた生成AIが誕生することで、さらなら価値の向上が期待できそうですね。

そうですね。ただし、量子コンピュータを動かすためには、絶対零度(-273.15 ℃)まで冷やすことができる環境が必要になります。そのため、利用可能なシーンが限られているのが現状です。

しかし最近は、「常温常圧超伝導」という革命的な技術が注目を集めています。もし、常温常圧超伝導が実現すれば、もっと簡単に冷やせる仕組みで量子コンピュータが使えるようになるんです。そうなればもっと身近に量子コンピュータが存在するようになり、オフィスの机で使える日が来るかもしれませんね。

PROFILE

DAISUKE MOTOKI

一般社団法人生成AI活用普及協会 協議員/株式会社KandaQuantum 代表取締役
東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了。株式会社Jijにて量子コンピュータを用いた実証実験に従事。株式会社AVILENにて社会人向けAI講師として講義を担当。数万社が利用しCMで有名な業務効率化プロダクト開発に従事しAIプロダクト開発の実績が認められMVPを受賞。各企業にいる中で研究とビジネスが一気通貫に繋がっておらず、よりよいAIサポートができていないという現状に課題を感じ、株式会社Kanda Quantumを創業。量子コンピュータを通じて、新しい顧客体験を実現する。